「セラミック矯正」や「クイック矯正」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか？これらの治療法は、短期間で見た目を改善したいと考える患者さまに人気の方法です。しかし、セラミック治療は従来の矯正治療とは根本的に異なり、歯並びの美観を短期間で整えることに特化した治療であることを理解することが重要です。この治療では、健康な歯を大きく削ることが必要であり、その結果、歯の耐久性が低下し、寿命を縮めるリスクが伴います。特に、歯を削ることで神経に負担がかかり、将来的なトラブルを引き起こす可能性もあります。そのため、治療を受ける前に、それぞれの治療法のリスクと効果を十分に理解し、慎重に検討することが求められます。

さらに、セラミック矯正は一見すると迅速で効果的な選択肢に見えますが、根本的な機能面の改善を行うものではありません。矯正治療とは異なり、噛み合わせの調整や顎の健康を考慮した治療ではなく、見た目の改善に重きを置いた方法です。そのため、治療後に噛み合わせが悪化し、顎関節症や他の口腔内の健康問題が生じる可能性があることを十分に理解しておく必要があります。健康な歯を長期間維持するためには、短期間の見た目の改善だけでなく、長期的な口腔の健康も考慮した治療計画を立てることが重要です。

目次

セラミック矯正とはどのような治療？

はじめに、セラミック矯正の基本事項を確認しておきましょう。冒頭でも述べたように、セラミック矯正はいわゆる歯列矯正とは根本的に異なる治療法なので、その仕組みや特徴を正しく理解しておくことは極めて重要です。

① 歯を削ってセラミックを被せる治療

「セラミック矯正」は名前に「矯正」と含まれていますが、実際には矯正歯科で行われる伝統的な矯正治療とは異なります。この治療は歯並びの問題や歯の形状の改善を目的に、歯を大きく削り、その上からセラミック製の人工歯を被せるというものです。削られた歯に被せられるセラミッククラウンによって、即時的に見た目の改善を実現できますが、これはあくまで表面的なものであり、歯の位置や噛み合わせに対する根本的な解決にはなりません。さらに、歯の削り方によっては神経を保つことが難しくなり、根管治療が必要になるケースもあります。これにより、歯の寿命がさらに短くなるリスクがあるため、治療には慎重な判断が求められます。

② 見た目をすぐに改善できるけれどもリスクも

セラミック矯正は、治療期間が非常に短く、基本的な処置が数日で完了することもあります。このため、「早く見た目を整えたい」という患者さまには魅力的に映るでしょう。しかしながら、歯を削るという行為には多くのリスクが伴います。特に、健康な歯を大きく削ることで歯の耐久性が低下し、将来的には噛み合わせの問題や歯の破損、場合によっては神経の損傷に繋がる可能性があります。噛み合わせのズレが生じると、顎関節症や食事時の不快感など、長期的な健康に悪影響を与えることが考えられます。また、セラミック自体も経年劣化するため、10年程度での交換が必要になることが一般的で、そのたびに再度歯を削る必要があることもリスクの一つです。

③芸能人の影響で若年層にも人気が広がる

セラミック矯正が広まった背景には、テレビやメディアで美しい歯並びを披露する芸能人の影響が大きくあります。その白くて整った歯に憧れる若者が増え、セラミック矯正を選ぶケースが増加しています。しかし、見た目だけを重視して治療を受けた結果、健康な歯を削ることへの後悔や、想定外の噛み合わせの問題に悩む方も少なくありません。見た目の美しさを追求するあまり、長期的なリスクを見過ごしてしまうことが多いのです。健康な歯を削ることにより、再治療が必要になったり、将来的な歯の健康に影響が出たりする可能性があるため、慎重に考えることが大切です。

セラミック矯正には歯の寿命を縮めるリスクがあります

セラミック矯正を検討されている方は、この治療法によってかけがえのない天然歯の寿命が縮まるリスクがある点を正しく理解しておく必要があります。セラミック矯正でなぜ歯の寿命が縮まるの？という疑問を抱く方も多いかと思いますので、ここではその理由をわかりやすく解説します。

① 健康な歯を大きく削る必要がある

「セラミック矯正」では、見た目を整えるために健康な歯を大きく削ることが避けられません。この削る過程で、歯のエナメル質や象牙質が大きく失われることで、歯の強度が低下し、将来的に割れやすくなったり、むし歯になりやすくなる可能性が高まったりします。また、場合によっては神経を抜く抜髄や抜歯が必要になることもあり、これによって歯の健康に重大な影響を与えるリスクがあります。一方、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正といった通常の矯正治療では、健康な歯を削る必要がないため、歯そのものの寿命を保ちながら、理想的な位置に移動させることが可能です。

② 歯軸の変化によるトラブル

セラミッククラウンを用いて歯の傾きを改善する際、歯の根の部分であるコアと呼ばれる土台を使用して歯の向きを変えることがあります。この場合、根管治療（神経の除去）が必要になることが多く、歯の寿命にさらに影響を及ぼします。また、歯の根の軸とクラウン（差し歯）の軸が異なることで、噛み合わせの不均衡が生じることがあります。こうした噛み合わせの問題は、歯全体に余計な負担をかけることになり、顎関節や周囲の筋肉にも悪影響を及ぼす可能性があります。このような状況は「噛めない」「痛みが続く」といった症状に繋がり、患者さまの生活の質を著しく低下させることもあります。

③ セラミッククラウンの耐久性と将来的なリスク

セラミックの被せ物には限界があり、通常は10年程度の寿命とされています。セラミック自体が欠けたり割れたりすることもありますが、歯の根元部分に問題が発生した場合、セラミッククラウンの交換が必要となります。この際、さらに歯を削らなければならず、悪い場合には抜歯が避けられなくなることもあります。そのため、治療の費用だけでなく、将来的なメンテナンスや再治療にかかる費用も考慮することが重要です。最初はリーズナブルに感じられた治療も、長期的に見れば大きな負担となる可能性があります。

もちろん、セラミック治療はむし歯や外傷などで既に欠けてしまった歯の補修として有効です。しかし、歯並びの矯正を目的としてセラミック矯正を選ぶことは、多くのリスクを伴うため慎重な判断が求められます。

本来の矯正治療とは、歯を正しい位置に導くこと

ここまでは、セラミック矯正の特徴やメカニズムについて解説してきましたが、ここからは標準的な矯正治療について説明します。セラミック矯正と歯列矯正を比較することで、両者の違いがより明確になるかと思います。

① 歯を動かす矯正治療の本質

池袋駅前歯科・矯正歯科では、舌側矯正やマウスピース型矯正を用いた治療を提供しています。これらの矯正治療は、ワイヤーや透明なマウスピースを使用して、歯にわずかな圧力をかけ、自然な位置へと少しずつ移動させるものです。この治療法は、歯そのものを削ることなく、美しく健康的な歯並びを実現するための手段です。また、矯正治療は見た目だけでなく、噛み合わせのバランスを整えることで、長期的な口腔内の健康を支える効果もあります。

② 矯正治療は人体の自然なメカニズムを利用

矯正治療の背後には、人体の自然な骨の代謝機能があります。歯槽骨（歯を支える骨）は絶えずリモデリング（新陳代謝）を行っており、矯正装置から加えられる力により、骨は徐々にその形を変え、歯を新しい位置に移動させます。この自然なプロセスを利用することで、歯を健康に保ちながら、理想的な位置へと誘導することができるのです。
（矯正治療のしくみ）

③ 部分矯正から全体的な噛み合わせ治療まで柔軟に対応

ワイヤー矯正やマウスピース矯正は、前歯の部分的な歯並びの修正から全体的な噛み合わせの調整まで、幅広い症例に対応可能です。これにより、患者さまの個別のニーズや希望に合わせたオーダーメイドの治療を行うことができます。部分的な修正であれば比較的短期間での治療が可能であり、全体的な噛み合わせの調整においても、自然な噛み合わせを作り上げることで、顎や口腔内全体の健康を維持します。（部分矯正について）

④ 目立たない矯正治療の選択肢

池袋駅前歯科・矯正歯科では、矯正装置が見えにくい「舌側矯正」や透明な「マウスピース型矯正」を提供しています。舌側矯正は矯正用ワイヤーを歯の裏側に装着するため、治療中でも他人に気づかれにくいというメリットがあります。また、マウスピース型矯正は取り外し可能で、日常生活での不便をできる限り抑えつつ治療が行えることが特徴です。

池袋駅前歯科・矯正歯科 総医院長からのメッセージ

① 長く美しい歯並びの維持には噛み合わせが重要

「セラミック矯正」と呼ばれる治療法は、見た目の美しさを追求する一方で、噛み合わせの機能が軽視されがちです。適切な噛み合わせが確保されていないと、長期的に顎関節や顔のバランスに悪影響を及ぼし、痛みや不調が発生する可能性があります。健康的で美しい歯並びを維持するためには、見た目だけでなく噛み合わせの重要性を理解し、矯正治療専門のクリニックでの相談をお勧めします。

② ご自身の歯を大切にしましょう

当院では「健康」と「美しさ」を両立させることを目指して治療を行っています。一度削ってしまった歯は元には戻りません。ワイヤー矯正やマウスピース型矯正といった現代の矯正技術は進化を続けており、治療期間の短縮や患者さまの負担軽減が実現されています。「早くきれいに」という気持ちは理解できますが、ご自身の健康な歯を犠牲にすることなく、長く健康な歯並びを維持する選択肢を選んでいただきたいと思います。