投稿日:2025.3.15
歯科矯正を行う場合にタバコは吸ってもいいの?
みなさん、こんにちは。
池袋駅前歯科・矯正歯科です。
厚生労働省の国民健康・栄養調査による2024年の日本の成人喫煙率は、男性が24.8%、女性が6.2%でした。
過去最低の喫煙率であり、年々減少傾向にあります。
しかし今もタバコが習慣になっている方もいて、その中には歯列矯正を検討中や矯正治療中の方もいるでしょう。
タバコを吸っていても矯正治療を行うことはできますが、おすすめはできません。
タバコが身体に悪影響であることはご存知だとは思いますが、歯列矯正においても影響を与えることがあります。
できるなら禁煙が望ましい理由を詳しく説明していきます。
目次 [hide]
タバコが矯正中に与える影響
歯列矯正中に喫煙者と禁煙者を比較すると、喫煙者は以下のリスクが高くなります。
1)治療期間が延びる
歯列矯正で歯が動く仕組みは、歯と歯を支えている骨(歯槽骨)の間には「歯根膜」という薄いクッションが存在しており、その歯根膜の働きを利用しています。
矯正力を加えて歯を押している側の歯根膜は伸び、歯槽骨が再生されていきます。
反対に押されている側の歯根膜は縮むので歯槽骨は吸収され、これを繰り返すことで1ヵ月で0.5~1㎜程度動きます。
新陳代謝が良いと歯槽骨の再生も早くなるので、歯が動きやすくなりますが、タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり、全身の血流が悪くなります。
血流が悪くなると代謝が悪くなり、歯槽骨の吸収と再生がスムーズに行われなくなります。
また、歯の吸収・再生を行うために必要な酸素やエネルギーが運ばれにくくなるので、歯の動きが遅くなり、治療期間が長くなる可能性があります。
紙タバコだけではなく、電子タバコや加熱式タバコも同様に注意が必要です。
2)治療費が高くなる
治療期間が長引くことに伴い、院が増えるのでトータルフィー制度ではないクリニックの場合、調整料の負担が増える可能性があります。
歯列矯正は保険が適用できないので、元々治療費が高いです。
治療期間が短縮できればその分治療費も軽減できるので、代謝を良くすることは節約にも繋がります。
※当院はトータルフィー制度を導入しております。
3)装置が着色する
現在の矯正装置は昔の金属の装置で行う方は少なく、透明のマウスピースや白いワイヤーに白や透明のブラケットの選択がメジャーになっています。
タバコにはニコチンやタールが含まれており、それらが矯正装置や歯にヤニ(着色汚れ)が付着して見た目に影響を及ぼします。
ワイヤー矯正は固定されているので取り外すことはできないですが、マウスピース型矯正の場合取り外しが可能なので、水以外の物を摂取するときはマウスピースを外しましょう。
4)外科処置後のトラブルに繋がる
喫煙は傷口の治りが遅くなるので、抜歯後やアンカースクリュー(矯正用インプラント)の際に影響が生じることがあります。
抜歯後は通常、抜いた穴に血の塊(血餅)が形成されて穴が塞がり、徐々に傷口が治っていきます。
しかしタバコを吸うと血餅が形成しづらくなるので、穴がうまく塞がらず強い痛みが発生しる「ドライソケット」になる可能性があります。
ドライソケットは細菌感染を起こし、進行すると顎骨や首のリンパなど広範囲に広がってしまうので注意が必要です。
また、アンカースクリューと言う小さいネジを顎骨に埋入して絶対的な固定源を作り、歯を動かす方法があります。
埋入する外科処置を行った後に喫煙すると、代謝が悪くなり歯周組織の再生に影響が出てしまうので、アンカースクリューが固定されずに脱離する可能性もあります。
これらのトラブルが懸念されるので、歯列矯正に外科処置を伴う場合は一時的に禁煙が必要になることがあります。
5)歯周病のリスクが高まる
喫煙は歯周病のリスクを高め、歯周病の悪化も招きます。
タバコの煙に含まれるニコチン、一酸化炭素、タールなどの有害物質が歯周組織に悪影響を与えます。
血管が収縮して血流が悪くなり、血中の栄養を与える役割や細菌の活動を制御する役割の因子が届きにくくなるので、歯周病の原因となる細菌が繁殖しやすい環境になります。
さらに免疫力が低下することで、歯周病菌に感染しやすくなることが原因です。
また、歯肉炎や歯周病のサインでもある歯茎からの出血があります。
しかし喫煙者は血流が悪いので出血がしにくく、歯周病のサインを見逃してしまう方が多いです。
6)口臭が強くなる
矯正治療中はワイヤー装置やマウスピースを装着しているので、タバコを吸うと臭いが装置にうつり、口臭の原因になります。
さらにタバコのヤニは歯の表面にベタベタと残り、その上に菌が張り付きやすくなります。
ただでさえワイヤー装置だと固定されていて歯磨きが難しいので、歯垢や食べカスが溜まると、発酵して口臭が悪化してしまいます。
タバコを吸った後は歯磨きや口をゆすいだりして、できるだけ口腔内を清潔に保つように努力しましょう。
電子タバコなら問題ない?
ニコチンやタールを含まないリキッドタイプの電子タバコは、煙ではなく蒸気を出して香りを味わう物です。
そのため血流を悪くするリスクが低いので歯列矯正への影響は少ないでしょう。
一方で現在喫煙者で多く見られるIQOSなどの加熱式タバコは、タバコの葉を使用しているので蒸気にはニコチンが含まれています。
紙タバコより健康被害が少ないように思われがちですが、発ガン性物質を含む多くの有害成分が入っています。
ニコチン摂取量も健康被害も意外と紙タバコと同等なので、決して安全なものではありません。
電子タバコと加熱式タバコは異なる物であり、加熱式タバコは健康への影響が大きいです。
歯列矯正の影響を考えると、以下の順番でリスクを減らすことができます。
- 禁煙
- 電子タバコ
- 加熱式タバコ
- 紙タバコ
喫煙による口腔内の影響
喫煙の習慣は全身の健康に悪影響を及ぼします。
その中で口腔内に影響するリスクを紹介します。
1)細菌が増殖する
タバコに含まれる化学物質の影響によって口内細菌が増殖します。
喫煙によって発生する一酸化炭素が歯周ポケット内の酸素濃度を下げること、ニコチンが唾液の分泌を減らし口腔内の乾燥を引き起こすことが細菌を増やし、細菌の活動を活発化させる原因になります。
その結果、虫歯や歯周病のリスクが高くなり、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞など全身疾患にも繋がります。
2)口腔ガンのリスク
タバコの煙には発がん性物質も含まれており、口腔ガンの発生リスクを最も高める要因です。
喫煙者は非喫煙者に比べて口腔ガンの発生率が約7倍も高いと言われています。
口腔ガンを患ったほとんどが喫煙者、もしくは受動喫煙者だということがわかっています。
周囲の方の健康にも影響を与えてしまうので、喫煙する場所を配慮しましょう。
まとめ
喫煙の習慣があっても歯列矯正はできます。
しかし禁煙している方に比べて、代謝が悪くなるので歯の動きが遅くなることや、治療期間が長くなる可能性があります。
また外科処置を行う際には痛みや失敗などのトラブルになり兼ねないので、矯正治療前から禁煙に取り組むことが望ましいです。
喫煙は矯正治療だけではなく全身への影響も大きく関与しており、生活の質(QOL)が低下してしまうリスクがあります。
「タバコは百害あって一利なし。」
この言葉通りであり、肺や呼吸器系、口腔内や見た目の老化も促されます。
ご自身の将来の健康を守るためには禁煙が重要です。
しかし喫煙はそう簡単にできるものではないと思いますので、タバコが矯正治療に影響があることをしっかり理解し、治療が始まる前には一応喫煙の習慣があることは歯科医師には伝えておきましょう。
そして定期的にクリーニングを行い、清潔で健康な口腔内を保ちましょう。