投稿日:2025.12.10
いびき・睡眠時無呼吸は歯列矯正で改善できる?歯並びと気道の意外な関係性!!
就寝中のいびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠の質を悪くし、社会生活や健康に影響を及ぼします。
色々な治療方法がありますが、その中の1つに矯正治療があることをご存じですか?
今回は、いびきや睡眠時無呼吸症候群と歯並び・気道の関係についてお話していきます。
目次
いびき・無呼吸の原因は「気道の狭さ」

結論からお伝えすると、いびきや無呼吸の原因は「気道」にあります。気道が狭くなると空気の通りが悪くなり、いびきをかきやすくなります。また、気道が塞がれてしまうと、無呼吸になるというわけです。
気道が狭くなったり塞がれる理由としては、次のようなものがあげられます。
①骨格
アデノイド(咽頭扁桃)や扁桃肥大がある場合に見られます。
②舌の位置
舌が筋力低下などにより喉の奥に落ち込むと、気道が塞がれやすくなります。
③顎の形
顎が小さかったり、下顎の位置が後退している場合にも見られます。
④肥満
脂肪は首周りや喉にもつきます。その結果、気道が狭くなりやすい傾向があります。
⑤飲酒
アルコールは筋肉を弛緩させるため、飲酒後は気道が狭くなります。
⑥鼻詰まり
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症などによる鼻詰まりがあると、必然的に口呼吸になってしまいます。その結果、イビキや無呼吸が発生するのです。
歯並び・顎と呼吸の関係

歯並び・顎・呼吸の3つは、密接に関係しています。歯並びや噛み合わせが悪いために口呼吸になってしまったり、逆に口呼吸が歯並びを悪くすることもあるからです。
例えば、前歯が前方にでている『出っ歯』や下顎が後退しているような『受け口』では、舌が下がって気道が圧迫されやすくなります。そのため空気を取り込もうとして、自然と口呼吸になってしまうのです。
また、本来の舌の正しい位置は上顎についている状態ですが、口呼吸を続けていると舌の筋力が衰え舌が常に下がった状態になってしまうこともあります。結果として顎が正常に発達できず、歯並びが悪くなるといったケースも珍しくありません。
矯正で改善できる仕組み

矯正治療により、いびきや睡眠時無呼吸症候群の改善が期待できるのは、主に次のような場合です。
・舌の位置が下がっている
・下顎の位置が後退している
・口呼吸をしている
矯正治療で歯並びや噛み合わせを整えることにより、以下のような効果が期待できます。
①下顎・舌の位置の改善
顎を広げたり正しい位置に整えたりすることは、舌があるべき位置に収まるよう促し、気道を確保することにも繋がります。
結果として、睡眠中に舌が気道を塞がないような環境を作ることができるでしょう。
②口呼吸の改善
出っ歯や開咬といった歯並びの場合、唇をしっかり閉じにくい傾向があります。
このようなケースでは、無意識のうちに口呼吸になっているケースも少なくありません。
歯並びや噛み合わせが整うと、自然と唇を閉じやすくなり、鼻呼吸を促すこともできるでしょう。
ただし他に原因がある場合には、改善が難しいこともあります。いびきや無呼吸の治療を希望される時には、医師や歯科医師とよく相談し、ご自分に適した治療を選択することが大切です。
矯正治療の種類

矯正治療は『ワイヤー矯正(表側矯正)』『裏側矯正(舌側矯正)』『マウスピース型矯正』の3つに分けられます。
・ワイヤー矯正(表側矯正)

ブラケットと呼ばれる装置を歯の表面につけ、ワイヤーを通して引っ張ることで歯を移動させます。固定式のため装置が目立ちやすいですが、様々な歯並びに対応可能です。
・裏側矯正(舌側矯正)

表側矯正と同じような装置を歯の裏側につける方法です。装置が見えにくいため、見た目を重視しながら歯並びを整えたい方に適しています。
・マウスピース型矯正

透明のマウスピース型の装置を用いる方法です。歯を少しずつ動かした状態を想定していくつものマウスピースを作製し、順番に装着することで歯を移動させます。
装置が目立ちにくく、取り外し可能なため、食事や歯磨きにも支障がありません。
マウスピース型矯正とスリープスプリントの違い
いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療に使う装置として『マウスピース型装置』や『スリープスプリント』があげられます。一見どちらも似ているため、同じように思われがちですが、以下のように目的が異なるものです。
マウスピース型矯正装置の目的
マウスピース型矯正は、歯を動かして歯並びや噛み合わせを整える治療です。マウスピース型装置は、歯を動かすことを目的として用います。
スリープスプリントの目的
スリープスプリントの目的は、就寝時に下顎を前に移動させることで舌が沈まないようにし、気道を広げることです。その結果、いびきや睡眠時無呼吸症候群の改善を図ることができます。
このように装置は似ているように見えても、目的は異なります。もし「矯正治療もしたいけれど、いびきや睡眠時無呼吸症候群もある」という場合は、それぞれの専門医と連携して進めることが重要だといえるでしょう。
どんな症例で効果があるか/ないか
ここでは、矯正治療での改善が期待できる可能性のあるケースをいくつかあげていきます。
・軽いいびきである
いびきがあっても、軽い症状であれば適応となる可能性があります。
・軽症〜中等度の睡眠時無呼吸症候群
睡眠時に無呼吸の症状が見られても、回数が比較的少ない場合は矯正治療での改善が見込めます。
・下顎が小さい
下顎が小さいことが原因で、気道が狭くなっているケースでは、下顎を広げる治療が有効です。患者様のお口の状態によっては、外科矯正が必要になることもあるでしょう。
・下顎が後退している
下顎が後退している場合は、前方に移動させることで改善されることもあります。(歯性要因に限る)
骨格要因がある場合は外科治療での改善が必要です。
このように、症状が軽度であったり顎に原因があるケースでは、矯正治療での効果が期待できます。しかし、重度や肥満といった他の要因も関係している場合には、矯正治療での改善は見込めません。医科で検査や診断を受けた上で、治療していく必要があるでしょう。
歯科×耳鼻科の連携による包括的アプローチ
いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療を行う際には、歯科や耳鼻科などでの連携が必要です。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、まず内科や呼吸器科・耳鼻咽喉科など専門機関での『終夜睡眠検査(PSG)』などを受けてみましょう。
無呼吸低呼吸指数(AHI)が5~30未満と軽度~中等度であれば、矯正治療での改善が期待できます。診断を受けたら、紹介状を持参して矯正歯科を受診してみてください。歯並びや噛み合わせ、骨格の状態などを診断し、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因となっていないかどうか診てもらうことができます。
まとめ:見た目も呼吸も整える矯正治療へ

今回は、いびきや睡眠時無呼吸症候群と歯並び・気道の関係についてご説明しました。
歯並びと呼吸は、お互いに密接な関係にあり、どちらかに問題があるともう片方にも影響を及ぼします。
睡眠の質が悪いと、疲れが取れないだけではなく、心身の健康を脅かす可能性があるため、注意しなければなりません。いびきや睡眠時無呼吸症候群に心当たりのある方は、ぜひお早めに専門医に相談してみてください。
池袋キュア矯正歯科では、矯正治療についてのご相談を随時承っております。いびきや睡眠時無呼吸症候群にお悩みの方で、歯並びや噛み合わせに乱れがあるという場合は、どうぞ気軽にご活用ください。





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