投稿日:2025.9.17
矯正で歯を抜くとどうなる?健康の影響と抜歯の必要性とは?
「矯正のために健康な歯を抜くなんて不安……。」
患者様からのご相談でよくいただくご質問のひとつです。
しかし実際には、抜歯によって健康を損なうことは基本的にありません。
むしろ、噛み合わせや歯並びを正すことが歯の寿命を延ばし、体全体の健康につながることもあります。
そこで今回は、矯正治療における抜歯の目的や健康への影響について、くわしく解説します。
目次
矯正で抜歯が必要になる理由とは?
歯をきれいに並べるスペースが足りない場合

顎の大きさに対して歯が並ぶスペースが足りないと、ガタガタに重なり合った叢生になる可能性があります。
歯が重なりあった状態では清掃がしにくく、むし歯や歯周病のリスクが上がります。
抜歯によって十分なスペースが生まれるため、自然で整った歯並びを実現しやすくなります。
口元を引っ込めたい場合

出っ歯や口元の突出が気になる場合は、前歯を内側に動かすスペースが必要です。
もし、非抜歯で歯列矯正をすると口元がさらに前に出てしまう可能性があります。
また、抜歯を行うことで自然でバランスの取れた横顔に近づけることができます。
噛み合わせのバランスを整えるため

歯並びの不調和は、噛み合わせの崩れにつながります。
また、一部の歯に負担が集中すると、歯根や歯周組織にダメージが及ぶこともあるため、健康な歯の寿命を縮めてしまう可能性があります。
そのため、適切な抜歯は全体の噛み合わせのバランスを整え、長期的な安定性が期待できます。
矯正での抜歯=健康被害ではない理由
通常4本(第一小臼歯)を抜歯しても噛む機能は保たれると考えられています。
その詳しい内容をご説明します。
28本の歯が必ず必要なわけではない

人の永久歯は基本的に28本(親知らずを含めれば32本)ありますが、そのすべてが日常生活や健康維持に欠かせないわけではありません。
矯正治療で抜歯の対象として選ばれることが多いのは「第一小臼歯」です。
この歯は前歯と奥歯のちょうど間にあり、中間的な役割を持っていますが、食べ物を細かく噛み砕く機能への影響は比較的少なく、ほかの歯が十分に補うことができます。
さらに、仮に4本の小臼歯を抜いたとしても、矯正で噛み合わせを整えることにより、かえって咀嚼の効率や発音のしやすさが改善されるケースも少なくありません。
抜歯をしたからといって「噛む力が落ちる」といった心配は基本的に少ないといえます。
歯を抜かないことで起こるリスクの方が深刻

一方で、「健康な歯を残したい」という思いから無理に非抜歯矯正を選んだ場合には、別のリスクが生じます。
歯列が不自然に広がる
スペース不足のまま歯を並べると歯列が外側に押し広げられ、口元が前に出すぎたり、歯ぐきが退縮したりする可能性があります。
歯磨きがしにくい
歯が重なり合った状態では、歯ブラシの毛先が当たりにくかったり、歯ブラシやフロスが届きにくくなったりします。
そうすると、プラークが残りやすく、むし歯や歯周病の発症リスクが高まります。
かみ合わせのバランスが悪い
上下の歯のかみ合わせがうまく噛み合わないと、一部の歯だけに過剰な力が加わる場合があります。
そのままの状態が続くと、歯や歯ぐきに負担がかかり、歯の寿命を縮める要因になってしまいます。
全身への悪影響
かみ合わせのバランスの悪さは、顎関節症、肩こり、頭痛、姿勢の歪みなどにもつながることがあります。
そのため、矯正治療で抜歯を避けることが、逆に健康全体のリスクを高めてしまう可能性も考えられます。
これらのことから、歯を抜歯して矯正をすることでかみ合わせのバランスが整い、機能的に多くのメリットがあります。
一方、抜歯を避けて矯正をしないことは、機能的にデメリットが多いでしょう。
そのため、矯正治療での抜歯はネガティブな行為ではなく、歯や体の健康を将来にわたって維持するために必要となるケースもあるのです。
歯を抜かずに矯正するとどうなる?

抜歯が必要なケースで歯を抜かずに無理に矯正治療を進めると、歯を並べるために歯列を外側や前方に動かす必要があります。
そうすると、以下のようなデメリットが起こることがあります。
スペースが足りず無理な並びになることも
前歯が前に突出する
スペースが足りない状態で無理に歯を並べると、口元が出て「矯正したのに口元が出ている印象」になる可能性があります。
歯が外に傾く
歯が外側に広がりすぎて歯ぐきが薄くなり、歯ぐきが下がる可能性があります。
かみ合わせの不安定化
見た目は一見整っていても歯が骨や歯ぐきにきちんと収まらないため、噛み合わせが安定しにくくなります。
抜歯をせずに矯正することは魅力的に感じても、将来的に歯や口元に悪影響を及ぼす可能性があり、慎重な判断が求められます。
理想の仕上がりにならない可能性もある
矯正のゴールは見た目の改善だけではなく、噛み合わせの機能性や横顔の美しさとのバランスも考慮して治療をすることです。
非抜歯で無理に歯列矯正をした場合、以下のようなリスクが考えられます。
横顔のバランスが崩れる
出っ歯の患者様では、抜歯をせずに並べると口元が突出したようになり、Eラインが崩れてしまうことがあります。
後戻りしやすい
歯列を無理に広げたケースは、治療後に元の位置へ戻ろうとする力が強く働きやすく、後戻りの可能性が高くなります。
噛み合わせの改善が不十分
歯並びが見た目だけ整っても、上下の歯がしっかり噛み合っていないと、咀嚼効率が悪かったり、一部の歯に負担が集中したりすることがあります。
抜歯による「健康被害」の心配がいらない理由

噛む力のバランスは全体で補える
歯並びが整うことで上下の歯が均等に噛み合うようになり、噛む力が全体にバランスよく分散されます。
そうすると、一部の歯に過度な負担が集中して摩耗や歯へのダメージを引き起こすリスクを軽減することができます。
つまり、抜歯によるスペース確保は、長期的には歯の寿命を守るためにも大切な処置です。
しっかりとした治療計画のもとで行えば問題なし
矯正治療は経験と知識に基づいて行われ、治療を始める前に以下のような精密検査を行います。
・セファロで顎の骨格や歯の傾きを分析
・3Dスキャンで歯列の形状や噛み合わせを詳細に確認
・咀嚼機能や横顔のバランスも含めた総合的な診断
これらの精密検査の結果を元にどのように矯正治療をするか治療計画を立案しますが、その上で抜歯が必要かどうか検討します。
抜歯が必要な場合には、どの歯を抜歯したら良いか慎重に計画を立てます。
そのため、将来の患者様のお口の状況も見越して治療計画を立案した上で、抜歯が必要な場合は抜歯を選択します。
矯正後は歯の清掃性が高まり、虫歯・歯周病リスクが軽減
歯並びが整えば歯ブラシやフロスがしやすく、プラークコントロールが向上します。
そうすると、むし歯や歯周病を予防しやすくなり、歯の健康寿命を延ばすことが期待できます。
実際に矯正後の健康に与える良い影響とは

噛み合わせの改善による顎関節・肩こり・姿勢への影響
噛み合わせが安定すると顎関節への負担が減り、肩こりや姿勢の乱れが改善するケースも見込めます。
口腔清掃がしやすくなることで歯の寿命が延びる
歯磨きはしやすく清掃性が良くなることで、虫歯や歯周病の発症リスクを軽減します。
そうすると歯の健康寿命を延ばすことにつながります。
見た目の改善による心理面・自信への好影響
整った歯並びは笑顔を魅力的にし、人とのコミュニケーションに自信を持ちやすくなります。
まとめ

矯正治療での抜歯は決して健康に悪いものではありません。
むしろ、非抜歯で治療を進めることの方が、歯の寿命や噛み合わせに悪影響を及ぼす場合もあります。
大切なのは、「なぜ抜歯が必要か?」という根拠と目的を理解したうえで判断することです。
ご不安な方は、まず一度カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。





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