投稿日:2024.11.18
歯列矯正で顎関節症は治るの?
皆さん、こんにちは。
池袋駅前歯科・矯正歯科です。
「顎関節症」という症状をご存じの方は多いかと思います。
そして、その症状に悩んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
そんな意外と身近な症状である顎関節症ですが、その症状や原因は複数存在するということをご存じでしたでしょうか?
今回は、顎関節症の症状と原因、そして改善方法についてご説明していきます。
目次
顎関節症とは?
筋肉の発達異常や、上顎と下顎の関節に問題が生じる疾患のことを指します。
症状には以下のようなものが挙げられます。
- 口の開閉をすると音がなる(カクカク,ポキポキ,シャリシャリ)
- 口が大きく開けられない
- 顎が重く感じたり、常に痛む感覚がある
- ものを食べると顎が痛む
顎関節症には軽度な症状から重度な症状まであり、上記の全ての症状が見られる人もいれば、1つの症状のみ見られる場合もあります。
顎関節症の原因
顎関節症の要因には大きくわけて3つあります。
顎変形症や、歯列の乱れによる咬合不全
上下顎が、骨格性により前後左右にずれ込んでいる状態の顎変形症や、歯列の凸凹が原因で嚙み合わせが不適合である場合、噛みこんだ時の力が分散されず、1点に集中してしまうことで顎関節にストレスを与えてしまう場合があります。
日常生活における「癖」
日常生活のあらゆる場面で知らぬ間に顎関節、咬筋へ負荷をかけている場合があります。
- ストレスを感じたときの歯ぎしりや食いしばり
- 頬杖をつく/爪をかむ
- 下顎を突き出す
- うつ伏せになって読書をしたりスマホをいじる
これらは癖で無意識下で行ってしまうことが多い為、知らぬ間に負荷が蓄積し、顎の倦怠感や痛みで自覚するということが多いです。
外傷
階段から落ちて顎を強打したり、交通事故等の外傷により、顎間関節に強い負荷がかかって症状を引き起こす場合があります。
また、これらの外傷は顎変形症を引き起こす可能性もあります。
顎関節症の改善方法
症状の改善方法には段階があります。
まずは、筋肉の緊張をほぐすマッサージや、筋肉緩和注射、癖の改善等で経過を観察します。
数か月間継続的に行うことで、およそ7割の方は症状が軽減し、改善に向かいます。
この段階で症状が軽減しない場合は、骨格異常を視野にMRIでより精密な原因究明を行います。
そして、最終的には必要に応じて外科治療が施されます。
矯正治療で顎関節症は治るの?
ここまでご説明した内容の通り、顎関節症には様々な要因があります。
そして、それらは併発していることが多いです。
矯正治療で改善できるのは、「歯列」と「嚙み合わせ」です。
この2点は顎関節症の要因となりえる為、矯正治療を行うことで症状が軽減することもあります。
しかし、何かしらの癖があったり、顎変形症を患っている場合は矯正治療単体では改善できないと可能性があります。
矯正治療を行って顎関節症が治る可能性があるかどうかは、精密検査でレントゲンを撮影した際に顎変形症の症状が見られればある程度判断がつきますが、「癖」というのはわかりかねます。
つまりは、「やってみないとわからない」という判断になることが大半です。
部分矯正で治る?
矯正治療を検討されている方には、「できる限り費用を抑えたい」という方が多くいらっしゃいます。
「歯列は気になっていない。嚙み合わせが一番の主訴。」という方も少なくありません。
比較的安価な部分矯正…部分矯正で改善はできるのでしょうか?
部分矯正の種類
▽片顎犬歯~犬歯(計6本)
対象が、犬歯から犬歯までの前歯のみという一番安価で期間のかからない治療方法です。
平均額40~50万程でできる治療方法ですが、対象範囲が狭いことから、可能な処置も限られます。
この治療方法で可能は処置は、「凸凹をとる」ことのみです。
また、前歯のみの治療ということで、顎関節症に関係している臼歯部(奥歯)は一切触ることができません。
▽片顎全体(計14本)
対象が、片顎の奥歯まで全体的に動かすという治療方法です。
平均額70万~80万程でできる治療方法であり、前歯だけの矯正治療よりは動かす本数が多い為期間がかかります。
しかし、この治療方法でも可能な処置は「凸凹をとる」ことのみとなります。
前歯のみの矯正治療とは違い、奥歯まで動かすことができますが、対合する歯は一切触らない為位置関係の調整が困難です。
その結果、歯を動かしたことで現状よりも嚙み合わせが悪化し、顎関節症の悪化につながる可能性があります。
部分矯正では「凸凹を取る」ということはできますが、「口元を下げる」ことや、「嚙み合わせを治す」ことはできません。
顎関節症の場合、「嚙み合わせ」を改善することが必要不可欠なので、部分矯正では対応が難しいということがわかります。
嚙み合わせを改善するには全体矯正が必須
部分矯正で対応ができない、「口元を下げる」動きや、「嚙み合わせ」を治す治療は全体矯正でのみ対応可能です。
矯正装置の種類
▽ワイヤー矯正
従来から存在する「表側矯正」、近年出てきた「裏側矯正」、そしてその両方を使用する「ハーフリンガル矯正」の3種類があります。
ワイヤー矯正で対応ができない症例というのはなく(※骨格要因除く)、重度な治療にも対応することが可能です。
勿論、嚙み合わせの改善も可能です。常に矯正装置が付いている為、継続的に力をかけることができる関係で矯正期間の短縮が見込めます。
しかし、食いしばりが酷くナイトガードを使用しているといった方は、矯正治療中はナイトガードが使用できません。
代わりに、常時嚙み合わせを若干浮かせる処置をして歯への負荷防止、そして食いしばりによる器具脱離を防止していきます。
▽マウスピース矯正
近年若年層を中心に注目を浴びている装置です。
この装置は自身で管理をしなくてはいけない「自己責任型」の装置です。
使用時間や、着脱ルール、マウスピース交換時期等を自身で管理しながら行う必要があります。
術者が手を加えることが少なくなったことで来院頻度を減らすことは出来ますが、管理が難しいことや着脱により継続的に一定の力を加えることが難しいことから、対象となる症例は少ないです。
歯列状態が良好であれば、マウスピースで嚙み合わせ改善をすることも可能です。ナイトガードを使用している方であれば、マウスピースをナイトガードの役割として使用することもできるので安心でしょう。
しかし、1年、2年かけて嚙み合わせ改善をしていく中で、マウスピースをつけた状態の嚙み合わせで癖がついてしまい、マウスピースを外したときに嚙み合わせが崩れたような違和感が生まれたり、奥歯、前歯どこか一部分が噛み合わないというような事例が多くあがっています。
(※マウスピースにより歯が圧下してしまうことが原因)
そのような症状が出た際には、一部マウスピースをカットして安定するまで様子をみたりする為、期間は長期的になりやすい傾向にあります。
ご自身の好みの装置を選ぶというよりかは、嚙み合わせ以外の口腔内状況に応じて医師の推奨装置を選ぶことを意識すると、精神的なストレスを軽減しながら治療することができるでしょう。
重症の場合、顎関節症のみ気になる場合はまずは口腔外科へ。
時折、顎関節症の症状は嚙み合わせだけが原因だと思って1番先に矯正歯科のカウンセリングへ来られる方がいらっしゃいます。
しかし、前述したとおり、嚙み合わせは要因の1つに過ぎなく、嚙み合わせを改善したところで100%症状が回復するという保証はありません。
もし、常に痛みや軋むような音、全く口が開かないなどの症状に悩まされている場合はまず口腔外科で検査をしてもらうことを推奨いたします。
また、歯列が気にならないという方も同様です。
口腔外科で検査をしてもらい、骨格や骨の構造的に問題がないことが確認できれば矯正治療で嚙み合わせを改善することで回復する可能性が見えてきます。
まとめ
顎関節症の原因には様々なものがある為、一概に「嚙み合わせのせい」などと決めつけることができません。
歯並びよりも顎関節症の症状が気になる場合は、まずは口腔外科の検査から受け、骨に異常がないかどうか確認をしましょう。
歯並びの方が気になるという場合は矯正治療優先でも費用対効果が得られるので矯正歯科のカウンセリングから受けて頂いても問題ありません。
当院のカウンセリングでは、顎関節症の症状や、歯列状態等から矯正治療前に口腔外科検査が必要かどうか可能性のお話もしております。
気になる方は是非一度お越しください。