投稿日:2023.5.24
セラミックが入っていても矯正はできるの?
日々、カウンセリングには様々なお悩みを抱えて新規の患者様がご来院されます。
そんな患者様の中には、「セラミックが入っているが矯正治療に影響はないのか?」という疑問を持たれている方も多々いらっしゃいます。
今回は、セラミックや銀歯といった「補綴(ほてつ)物」といわれるものがどの程度矯正治療に影響があるのかご説明いたします。
目次
補綴物ってなに?
補綴物とは、虫歯治療等で歯を削った際に穴を埋めていく人工的材料で作られたもののことです。
初期虫歯であれば、虫歯の浸食が浅い為削る量が少なく、レジンを流し込んで硬化することで補います。
しかし、中期~重度の虫歯になると神経に近しい部分まで虫歯の浸食が進んでいる為深く削ることになります。
深く削ってしまうと、レジンでは柔軟性に優れ過ぎている為、虫歯の菌の侵入を防ぎきれません。レジン治療で放置してしまうと必ずと言っていいほど、2次虫歯を引き起こします。
そこで、深く削った場合は強度のある補綴物を入れて補います。
補綴物の種類
補綴物には大きく分けて3つの種類があります。
In(インレー)
部分的に虫歯に浸食されている箇所を削り、元の形に似せたものを詰めていく「詰め物タイプ」です。
写真のように、歯の溝(裂溝)に沿って詰めていくことがほとんどです。
中期虫歯の場合はこのタイプを詰めることが一般的です。
On(アンレー)
インレー同様の「詰め物」ですが、インレーよりも幅広く覆われています。歯の側面まで大きく覆われていることがあります。
インレーよりも浅く広く虫歯が浸食している場合にこのタイプが詰められます。
Cr(クラウン)
インレー、アンレーとは違い、俗に「被せ物」と言われるものです。
「被せ物」は名の通り全面に覆いかぶさっています。
このタイプは、中期の中でも後期、あるいは重度の虫歯であり、根っこまで虫歯の菌が浸食してしまった場合に使用します。
歯の根っこまで虫歯の菌が浸食してしまった場合、神経を抜く処置を行い、神経の代わりに支柱となる材料を詰めるという処置を行います。
この時、歯冠と言われる、普段我々がみている「歯」の部分は虫歯にほぼ浸食されてしまい、深く大きく削っている為、自身の歯がほぼない状態です。
ですので、根っこの処置が終わった後、強度の強い専用レジンを使って支台を形成し、余分な歯は全て削り、被せ物で全面的に覆います。
補綴物の材質の違い
補綴には、材質の違いもあります。
銀歯
保険適用で入れることのできる補綴物です。
最大のメリットは「安い」という点であり、クラウンだったとしても1万円以内で入れることができます。
しかし、材質的に表面に虫歯の菌が付着しやすい為、2次虫歯になる可能性があります。また、クラウンを長期的に着けていることによって、メタルの成分が溶けだし、歯肉が黒く色づいてしまう「メタルタトゥー」という症状が起こります。
金歯
保険適用外の補綴物です。
色見が印象的な為、近年は入れている人も減少してきてはいますが、銀歯に比べて強度がある為長期的に使用できることがメリットです。
銀歯の寿命が10年とした時に、金歯は20年と言われています。
しかし、保険適用外なので1本12万前後~とかなり高額になっています。
セラミック
保険適用外の補綴物です。
審美性が高い為、老若男女問わず人気の高い補綴です。
セラミックの中でも、強度別で種類があり、個々の咬む力等にあわせて強度を選択していきます。
1本8万前後~15万前後とこちらも高額ではありますが、天然歯に合わせて色見の調整が可能であり、陶器のような材質の為虫歯の菌の付着も防ぎます。セラミックを入れることで虫歯予防の効果も期待できます。
矯正に影響のある補綴物
矯正に影響があるかないかは「装置の着く部分に補綴物があるかどうか」で変わります。
ですので、「クラウン(被せ物)」、そして場合によっては「アンレー(詰め物)」が影響を及ぼします。
矯正にどのような影響がでるのか?
補綴物は、通常の歯よりも表面がツルツルしており、表面の凹凸が少ないです。
そして、銀歯とセラミックで比べるとセラミックは陶器のような材質な為、よりツルツルしています。
矯正時には、歯の表面に歯科用の接着剤で装置を着ける必要があります。
天然歯には、目ではわからないほどですが表面に多少の凹凸がある為、表面の接着面積が増えることでしっかりと装置を装着することができます。
しかし、補綴物は表面の凹凸が少ない為接着面積が少なく、結果として装着をしてもすぐに外れてしまうということが起こりえます。
できる限り外れないよう、銀歯の場合には多少表面をやすりで傷付けたり、とても細かい砂を吹きかけて表面にざらつきを持たせて装着を試みることもあります。
ただ、これは銀歯が加工しやすい材質な為にできる処置方法です。
セラミックは加工が難しい為、外れるたびに着け直しをするほかありません。
「装置が外れるたびに通院をしなくてはいけない。」という通院のストレス、そして、あまりにも頻繁に外れると必要な力を与えられなくなり、「仕上がりが変わってしまったり」、「矯正期間が延びてしまったり」といったリスクがあります。
矯正に影響が出ないようにするには・・・?
補綴物を外して仮歯の状態に戻していただくと、矯正に影響が出ることを防ぐことができます。
しかし、一度外した補綴物は矯正後に再利用することはできない可能性が高いです。
(※矯正前の歯の位置で作成されたものである為。)
矯正治療終了後に補綴物の再作成も必要となるので、トータルで【矯正治療代+仮歯処置代+補綴再作成代】お費用がかかる想定になります。
手間がかかる+費用がかかるといった点で補綴物を外す事にご抵抗を感じる方は多数いらっしゃいますが、矯正治療はエステのように何度もできるものではありません。
医療行為ですので、矯正治療は1回で終わらせるのが最良です。
仕上がりや将来の歯の為にもひと手間かけることを当院は推奨しております。
仮歯とは?
仮歯とは、補綴物ができるまでの間、歯の形に合わせて歯肉の再生を促したり、審美性を損なわないようにつける、プラスチック製の人工歯です。
プラスチック製の仮歯のほうが器具の脱離を防止できる為、矯正治療中は仮歯で過ごして頂くようお願いしております。
仮歯には、一般歯科がその場で作るタイプと、技工所に発注をして作るタイプがあります。
その場で作るタイプの場合、先生の形成技術が必要となる為、審美性の高い仮歯を希望される場合は技工所に発注するタイプが無難です。
しかし、技工所に発注するタイプのほうが費用は高くなります。
セラミック矯正と歯列矯正の違い
捕捉として、セラミック矯正についてもお話します。
セラミック矯正とは、前歯4本、あるいは6本をまとめてセラミッククラウンにし、出っ歯等の症状に対し、歯冠(歯が見えている部分)のみを強制的に向きを変えることで改善を試みる方法です。
▽セラミック矯正のメリット
・最短1日でできる
・矯正治療に比べて費用が安い
▽セラミック矯正のデメリット
・歯根の向きが変えられない為、重度の出っ歯等の場合、歯冠部分のみ向きを変えても口元の突出感が取り切れない場合がある
・健康な歯を大きく削る為、元の歯には戻れない。
セラミック矯正をしてみたが、「口元の突出感がなくならなかった」とご相談に来られる方が度々いらっしゃいます。
セラミック矯正後の矯正治療は可能ではありますが、セラミックのままでは器具が頻繁に外れてしまい、歯根をしっかりと引っ張るだけの力が与えられない為「仮歯」に戻してもらう必要があり、矯正治療後に歯の向きに合わせて新しい被せ物を作ってもらう必要があります。
「後悔している」と嘆いている方も多いです。矯正治療では歯根の向きから変えることができるので、出っ歯でお悩みの方はまずは歯列矯正で検討してみましょう。
まとめ
今回は、補綴物と矯正治療への影響についてまとめました。
補綴物と矯正装置の接着剤の相性が悪く、外れやすいものである為、治療期間が延びたり、来院頻度増加、治療計画のズレというリスクをできる限り軽減したい方は「仮歯」に切り替えることをお薦めしています。
また、口元を下げたいというお悩みをお持ちの方はセラミック矯正ではなくて、歯列矯正から検討すると後悔しない治療法が見つかる可能性が高くあります。
無料カウンセリングでは、あらゆる矯正治療に対するお悩みのご相談を受け付けております。
ご興味のある方は是非カウンセリングへお越しください。